【JRA競馬】大きく変化した「放牧」という言葉のイメージ

【JRA競馬】大きく変化した「放牧」という言葉のイメージ

【島田明宏(作家)=コラム『熱視点』】

先週月曜日発売の「週刊ギャロップ」から、コビさんこと小桧山悟調教師の新連載「私の馬研究ノート」が始まっている。

同時に、東京競馬場場長などをつとめた増田知之さんの新連載「ゴールポストの追憶」もスタートした。

コビさんの連載では、「大尾形」と呼ばれた尾形藤吉元調教師(1892-1981)の著書『調教の秘密』に記されている調教技術について、次回から、解説付きで紹介していくという。

面白い試みだと思う。尾形元調教師は、JRAが創設された1954年以降だけでも、歴代最多の1670勝を挙げている。ダービー8勝を含め八大競走を39勝しているのだが、この数字には、JRA創設前の国営競馬時代、さらに前の日本競馬会時代、倶楽部時代の勝ち鞍も含まれている。何しろ、JRA創設前に1000勝以上も挙げているのだ。

尾形元調教師の全盛期は、競馬場内の厩舎のほか、近隣の外厩にも管理馬を置いていた。牡馬用と牝馬用に分けられ、100頭以上の管理馬がいたときもあったという。当時は、若駒の育成は競馬場で行われるのが普通だった。

それが時代とともに変わり、育成は、牧場の仕事になっていく。21世紀になると牧場の役割はさらに大きくなり、レースの合間の調整もこなすようになった。育成と中間の調整が、「外厩」と呼ばれる施設で行われるようになったのである。シーザリオが中間を過ごしたグリーンウッドトレーニング、アーモンドアイの活躍で脚光を浴びるようになったノーザンファーム天栄、コントレイルの放牧先である大山ヒルズなどが知られている。

尾形元調教師の府中の外厩には、軽い運動ができる程度の馬場しかなかったので、東京競馬場まで一般道を通って移動し、競馬場のコースで調教していた。であるから、言葉は同じ「外厩」でも、現在の外厩とはシステムは異なっていた。

それでも、主催者から借りた厩舎ではなく、個人の所有地で、現役競走馬の中間の調整が行われる、という点では共通している。

牧場の業務の範疇がひろがるということはすなわち、調教師の業務の範疇が狭まることでもある。そうして業務の分担が移行するのと歩調を合わせるように景気が後退し、バブル以前より馬をポンと買えるお金持ちが少なくなっていく。私が競馬を始めた1980年代は、馬のローテーションや鞍上は調教師が決める、というのが当たり前だった。馬主が馬を買っても預ける厩舎がなく「先生、お願いします」と頭を下げて回った、なんていう話をよく聞いた。「金は出しても口は出さない」というのが、いい馬主と言われていた。

ところが、バブル崩壊後の長引く景気後退とともに調教師と馬主との力関係が逆転し、今や、自身の一存で馬のローテーションを決められる調教師はいなくなったのではないか。

ノーザンファームで生産され、関係の深いサンデーレーシングやキャロットクラブが所有する馬が、ノーザンファーム天栄やノーザンファームしがらきなど、優れた施設とマンパワーを持つ外厩で仕上げられ、レースの10日前までにトレセンに戻り、レースで結果を出す――というサイクルは、もはやおなじみになっている。

>>【育成牧場】外厩の雄!関東馬の躍進支える『ノーザンファーム天栄』

かつて米国アーリントン国際競馬場(当時の名称)などに厩舎を構え、1990年代にしばしば武豊騎手を起用したノエル・ヒッキー氏は、フロリダに牧場を経営し、管理馬のほとんどを自身で所有する「オーナー・ブリーダー・トレーナー」であった。

ノーザンファーム出身の調教師が何人もいる今、吉田勝己氏も「オーナー・ブリーダー・トレーナー」に近づきつつあると言えるのではないか。しかも、ヒッキー氏より遥かに大きな規模で。

もともと、ヨーロッパで発展して明治時代に日本に入ってきた近代競馬は、金持ちが自身の所有馬に自ら乗り、ライバルと優劣を競う、というものだった。

それが次第に、腕の立つ乗り手に騎乗を依頼し、馬の扱いの上手い者に仕上げを任せていくうちに、現在の形になった。

今でもヨーロッパでは、オーナー・ブリーダーが厩舎を所有し、そこで調教師に所有馬を管理させる例がある。

日本でも、時代が進むにつれ、自然と昔の形に戻っている部分もあり、外厩の重要性が増したのも、そのひとつと言えるだろう。

と、いろいろ書いたが、実は、今ようやく前置きが終わったところだ。

今回は、「放牧」という言葉が、時代とともに実体にそぐわなくなってきており、何か別の表現はないか――ということについて書くつもりだった。

おじさんの話が長くなることには主な原因が3つある。前置きが長いこと、脱線すること、同じ話を繰り返すこと、である。

話を本題に戻すと、レース後、「放牧に出された」と記されていても、別に放牧地で青草を食べたり、ゴロンと横になったりしているわけではない。立派な坂路や周回コース、トレッドミルなどのある外厩で、次走に備えているのだ。

昔は調教施設のない牧場に移動させて笹針を打ち、しばらく運動もさせずにのんびりさせることもあり、だから「放牧」という言葉が定着した。

1990年の夏、当時調教助手だったコビさんと、昨年亡くなったかなざわいっせいさんと3人で日高を旅したとき、その年のオークスを勝ったエイシンサニーが放牧地にいた。今なら「サンシャインパドック」などと呼ばれる、小さなスペースだったように記憶している。そこにかなざわさんが入って馬に近づくと、コビさんが「蹴れ、蹴れ!」と言い、かなざわさんをムッとさせていた。

私が初めて見た「放牧中の現役競走馬」が、あのときのエイシンサニーだった。それもあって、私のなかでもしばらく「放牧」のイメージは、放牧地でのんびり休むことだった。

外厩で中間を過ごすこと、過ごさせることが、「放牧」や「休養」でないとすれば、どう表現すべきだろう。「調整」あたりが適当なのか。あまりに普通すぎてオチがつかない感じがするので、またしばらく考えてみたい。

参照先URL:もはや「放牧」ではない/島田明宏

名無しさん
競馬ファンなら(ノエル・ヒッキー氏以外は)
誰でも知ってるようなこと・・・
名無しさん
これなら最近もデアリングタクトはオークス勝った後の夏場にノルマンディーで昼夜放牧してたよな
名無しさん
単に「外厩」と「放牧」で使い分けたら良い。
名無しさん
今のノーザン系の育成を見てると、シンボリ牧場の先先代のオーナーがやった事は時代を先取りしすぎてたんだなぁ、と。
名無しさん
初めて知る事ばかりでした。
放牧に出すとは大概英気を養うために色々な牧場に出して他の競走馬などと時に戯れたりしているのかと思ってました。でも競走馬は経済動物で勝たなきゃ成績が良くなければ酷使されたり抹消されてしまうんですよね。遠縁の人がサラブレッドの牧場を経営してました。皆可愛い馬でしたが、走らなければ処分されてましたから。厳しい世界です。
名無しさん
記事とあんまり関係ないけどエイシンサニーが気になって調べたら2か月前まで生きてたことにびっくりしたという
名無しさん
島田のエッセイは相変わらずつまらない
名無しさん
最近じゃ競馬新聞に放牧先が何処か記されるくらいだから本当に重要
名無しさん
話が前置きで終わってませんか 笑
かなり濃い話を期待しましたが
名無しさん
外厩の存在が競走馬のローテーションにも変化を与えて、ぶっつけでG1で結果を出すことが珍しくなくなった。
その意味でも外厩調整の詳細についてはもっと情報が出るべきと常々思っているが、新聞には殆ど乗っていないのが現状。マンパワー的に記者が取材をすることができないようですが、もうちょっと何とかならないものかなと思っています
名無しさん
だから心臓発作で死ぬ馬が増えたって事だ
名無しさん
昔の調教師って凄いな。馬主の馬購入のアドバイスが出来る相馬眼が必要、外厩なんて無いから、入厩し引退する迄、基本的に全ての育成を自厩舎で行う調教師としての能力、管理馬が厩舎を出る時は引退か、昔の休養要素の強い放牧以外、ずっと管理し育成する。これ、凄い事だと思うんだけどな。
名無しさん
相変わらず中身のない原稿を書く人ですね。
私の妻は美人です!
文章がなげ~~よ
名無しさん
外厩関係者が馬券買うのもそろそろ規制しないと。
名無しさん
エイシンサニー、初めて的中したGI。単勝1点と枠連で5000円使って4、5万になった記憶が・・・友達の車がサニーだったから単勝買ったんだよなぁ。
いまでも俺ん中ではダービーよりもオークスのが力入るんだよね〜。
degoo
そのおかげで日本馬が海外で活躍できるようになったのも事実なのではないかな。馬に携わる人には感服する。
名無しさん
最近の馬は使わなすぎと思っていたが、放牧でストレスが溜まるとなると、一流馬はシーズン3走どころかシーズン2走も当たり前なのかもしれない。
名無しさん
外厩自体は、それが日本馬のレベルアップにつながるならいいんだけど
問題はそこでの情報が無いことで、予想する側としては休み明けの取捨も調子の把握もしづらくなってるってとこだよな。
調教過程の詳細が与えられてることで予想に広がりが出て、それが日本での競馬人気に寄与してきた部分もあるだろうし
その部分を公にしてもらえると、競馬がより面白くなるはずだけどねえ
名無しさん
オジサンの話は長いな。これ全部前置きじゃねーか(笑)
dad
休み明けの牝馬なんて、買うヤツはアホでしたよ、うん懐かしい。
名無しさん
藤沢和雄師が「いまは調教師ではなくて調整師ですよ」と言ってたのを思い出した
名無しさん
個人的には、鍛練が妥当かなと思いますが
いつも思うのは、施設とデータ的な使用法が
最先端であるということです。
外厩が素晴らしいと持ち上げるのはいささかかなと。
現に優秀な若手は、その外厩から中央に
入ってるわけなので。
もっと美浦や栗東は、土地がないのならば
洗練されるべきですね。
名無しさん
なんでシンボリ牧場が出てこない。シンボリルドルフやシリウスシンボリは和田さんに育成された外厩馬だよ。
名無しさん
農林水産省の天下り先になってなければいいんだか、、。そのうち信楽と天栄から競馬が使える日が来るでしょう。
名無しさん
外厩仕上げになる厩舎もそれなりにあるけど、本当に信頼できるのは手元でしっかり仕上げる厩舎だと痛感してる。もちろんそういう厩舎でも外厩で調整してもらって、手元で仕上げられるだけの仕上げをしてもらっているから出来ることではあるから、外厩のレベルアップは間違いない。
ボトルネックは手腕不足や資金不足ではなく、人手不足になりつつあるからね。外国人がたくさん働いてるもの。
名無しさん
近年桜花賞見ていて「エルフィンSから2ヶ月休養」なんて表現も違和感あります。
今じゃ2ヶ月間隔開けるのとか当たり前だし、実際休養なんかしていなくて外厩や厩舎でビシビシやってるのだろうからね。
楽に生きよう
外厩で成果を上げた元祖はルドルフだろうな
やはりあの馬の登場が大きかったと思うよ
名無しさん
エイシンサニー、懐かしいなあ。
オークス制して有馬も出走した名牝。
あの頃の競馬は楽しかった。
名無しさん
最近は心房細動だの、鼻出血だの、急性心不全だのと昔は無かった事故が多くなったと感じています。
これって、サラブレッドもノンビリ放牧されていないことから来る事故のように思います。